FC岐阜と大木サッカー 〜 生きてる喜び感じよう
5月6日(日)長良川競技場にて
少し前の話になるけれど、これは備忘録としてもどうしても書いたおきたくて。
京都で過ごしたGW の最終日、帰京する前に越智さんの車で岐阜へ連れて行ってもらって、FC岐阜の試合を観戦に。Jリーグ観戦は久しぶり。昨年の夏、やはりFC岐阜の試合を三ツ沢に観に行って以来だろうか。
そして今回の観戦は、GWの最後に相応しい、最高の時間になった。
FC岐阜を率いているのは大木武監督。これまでヴァンフォーレ甲府や京都サンガで監督をし、2010年南アフリカW杯では、日本代表のヘッドコーチとして、岡田監督と共にW杯を戦った人物。
大木さんは「クローズ」という独自の戦術を用いて、甲府や京都で「強者に立ち向かうため」のフットボールを披露し、サポーターの心を鷲掴みにした名伯楽。オシムさんの跡を継いだばかりの岡田さんが大木さんをコーチとして招き、就任当初、盛んに「接近、展開、連続」というキーワードを発信してましたよね。大木さんのフットボール観、そしてクローズが日本代表に必要だと岡田さんが感じたからこそ、大木さんを招いたのでしょう。
最終的に日本代表は現実路線に舵を切ったため「接近、展開、連続」のクローズが南アフリカで披露されることはなかったけれど、それでもあの時、僕らは一瞬夢を見た。代表レベルで、大木さんのフットボールが見られるんじゃないかって。日本人ならではの、新しい独自のフットボールを世界に披露してくれるんじゃないかと。
3年前には、バニーズ京都のスーパーアドバイザーも務めていた大木さん。当時僕はその大木さんに会いに行って、たっぷりと話を聞かせてもらった思い出は今でも忘れられない。初めて会う僕みたいな人物にも一切の壁を作らず、気さくに何でも話してくれました。その人間性に、一瞬で引き込まれてしまった。
その時は焼肉もご馳走になりました。本当にいい人だった。
当時書いたコラムです。
選手の自主性を伸ばし、魅力的なサッカーで「京都から日本をひっくり返す」女子サッカークラブのはなし | FootballEDGE
大木さんについては、他の方が書いたこんな記事も。とても素敵な記事です。
そんなわけで僕、大木さんのこと大好き。好きなだけでなく、間違いなく日本で最高の監督だとも思ってます。選手のハートを掴むあの楽しい練習と、人間性、そしてレベルの高い斬新なフットボール観。素直に尊敬してます。
そんな大木さん率いるFC岐阜が、この日も魅せた極上&劇場フットボール。
心を揺さぶられ、魂まで持ってかれた。そんな、GW最終日だったのです。
【FC岐阜】2018明治安田生命J2リーグ第13節 5/6(日)松本山雅FC戦ハイライト - YouTube
岐阜のサッカーは、ただショートパスを繋ぐことありきなのではなくて、しっかりとその仕組みをつくっている。仕込んでるというべきか。目立ったのは、マイボールになったらアンカーを経由してボールを落ち着かせて、その間に4-3-3の中盤の3、その左インサイドハーフがスルスルっと左サイドラインのギリギリまで張り出す。そこにCFが寄ってきて、左ワイドの選手と3人がセットになったところにボールを入れるところから崩しが始まる。
さ、ここからショータイムでっせ、と。短いパスとラン、ドリブルとワンツーと3人目、4人目の動きで相手の目と動きを釘付けにし、マネキン状態に陥らせてエリア内に侵入する岐阜Style。
まさにショータイム。こういうの大好き。あぁ、楽しい!
反対の右サイドには、田中パウロ淳一という、独特のタッチとリズムを持つドリブラーがいる。彼が時間を演出し、右SBの選手も絡んで、左サイドとは姿の違う崩しを魅せる。
そうかと思えば、DFラインからの一発ロングボールも繰り出せる。
自分たちがやりたいこと全てありきなのではなく、それを始める時や場所は相手を見て決める。その引き出しは多数、用意してある。
その懐の深さを、FC岐阜のサッカーからとても感じ取れた。
ただの自己満じゃない。ただロマンを追い求めているだけのナイーブさもない。この唯一独自のサッカーで「勝つんだ」という強い意志が、岐阜の楽しいサッカーの裏側からとても強く伝わってきた。だからこそ、心を持ってかれる。だからこそ、本当のロマンを感じる。
試合終了間際、岐阜が1-0でリードしているアディショナルタイム。松本山雅がDF陣も上げてパワープレーを仕掛けて防戦一方、何度も弾いて凌いで…という攻防から最後にボールがこぼれ、岐阜のカウンター。もうラストプレーだからスローダウンして終了の笛を待ってもいいのに、そんな素振りは一切見せず、この時間帯なのに全力ドリブルでカウンターで駆け上がる。それに付いていくベテラン難波。最後は当然、その難波選手にパスが渡り、劇的な追加点が入ったところで試合終了…。劇的な幕切れに大興奮。あそこで2点目を狙わずに逃げ切りを図らず、果敢にゴールを獲りにいったマインドの熱量こそが、実は大木イズムの真骨頂なのではと思う。
昨年三ツ沢に観に行った時も同じことを感じたのだけれど、岐阜の選手って、試合開始から試合終了まで、ずっと「走れちゃう」んですよ。奪われた後の追い込みも然り、相手ボールに対しての速い寄せも然り、そしてこの日の最後のカウンターみたいなシーンでも、然り。
相手一人に対し勢い余って3人がいっぺんに寄せに行くとかもあるしね…(熱量)
これを可能にしてるのは何だろう、って思う。もちろん、大木さんはじめ岐阜スタッフ陣によるトレーニングの賜物なのは間違いないのだろうけれど、たぶんそれ以上に、岐阜の選手たちは心からサッカーを楽しんでるんじゃないかと思うんです。サッカー楽しい!っていう思いを、プロにまで上り詰めた選手たちが、日々、感じながらプレーしてるんじゃないかって。
その楽しさと喜びを、岐阜の選手たちからはすごく感じる。
走れちゃう熱量は、楽しさと喜びから。
これだけで、大木さんがいかに名指導者であるかがわかりますよね。
あの楽しい練習を毎日やれるんだもん。そりゃ楽しいよね。選手たちが羨ましい。
楽しいだけでなく、大木さんには熱さもある。昨年の三ツ沢で、後半、試合が熱くなってきた時に岐阜がメンバーチェンジを用意。交代選手がピッチサイドに出て交代を待っていた時に、ピッチ内である選手が負傷で倒れ込んで。それを見たコーチが「交代、このまま行きますか?」と大木さんに確認したら
「行けよ!関係ねぇよ、行っちゃえよ!」
って。大木さんめちゃめちゃ熱く返してた。
この光景見た時、あぁ、俺やっぱりこの人のこと大好きだ!って改めて思った。
選手をその気にさせる楽しさと熱さ、そしてもちろん、選手を虜にするフットボール理論。
見習うべき、最高の指導者の姿だ。
試合が終わり帰ろうとした時、スタジアムに流れてきたのが
「勝利のうた」(ディアマンテス)
この曲はサッカー関連でよく使われるのでご存知の方も多いだろうけれど、感動的な岐阜のゲームを観た後にこの曲を聴くと、余計に心に響いて、少しうるっと来そうになってしまった。
中でもサビの歌詞「生きてる喜び感じよう」のところで、ハッと思った。そうだ、岐阜の選手たちから感じたのはコレだって。生きてる喜び、サッカーしてる喜び。彼らがそれをピッチで表現してるから、僕らの心にもストレートに突き刺さるんだよなと。
「勝利のうた」この名曲は、FC岐阜のためにこそある。
楽しさと喜び、そして熱量。やっぱり大木さんの率いるチームは面白い。
先日のコラムで バニーズ京都のサポーターになった と報告した僕ですが、もう一チーム、FC岐阜のサポーターにもなろうと決めた日だったのだ。
FC岐阜。ぜひ一度、その極上&劇場フットボールを体感してみてください。